こんにちは。今回は、妊活や不妊治療を進めていく中でよく耳にする病気のひとつ、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」 について解説します。
実は妻ちゃんもこの疾患を持っていて、不妊治療を始めてから初めて深く知るようになりました。
名前を聞いただけでは何やら難しく感じますが、男性側もしっかり理解しておくことで、妊活に向き合うパートナーを支えやすくなります。この記事では、PCOSがどのような病気なのか、原因や症状、治療法、不妊治療にどう関わるのかをできるだけわかりやすくまとめます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?
多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovary Syndrome, PCOS) とは、排卵がうまく起こらないことで月経周期に異常が出たり、不妊の原因になったりする婦人科の代表的な疾患です。
卵巣の中にたくさんの小さな卵胞(卵子の入った袋)が並んでいても、そこから排卵に至らない状態が特徴です。
ポイントを簡単に言うと
- 卵子は育っているのに、排卵できない
- 生理周期が乱れる、不妊の原因になる
- ホルモンのバランスが関係している
【通常の排卵とPCOSの違い】
【通常】
卵胞が1つ → 成長 → 排卵 → 妊娠のチャンス
【PCOS】
卵胞がたくさん育ちかける → 途中で止まる → 排卵できない
→ 卵巣に小さい卵胞が並んだまま残る(ネックレス状)
どのくらいの人がPCOSを患っているのか?
実はPCOSは珍しい病気ではありません。
日本では女性の5〜8%程度がPCOSに当てはまるとされており、欧米ではさらに多い地域もあります。
つまり、20人に1人程度の割合で存在する、比較的身近な疾患です。
妊活をしていると「思ったより生理がこない」「排卵検査薬が反応しない」といった悩みで検査を受けた結果、PCOSと診断されるケースも少なくありません。
【PCOSの有病率】
地域・国 | 有病率(おおよそ) |
---|---|
日本 | 5〜8% |
欧米 | 8〜13% |
世界全体平均 | 約10人に1人程度 |
病態の仕組み(男性にもわかりやすく解説)
PCOSは「ホルモンのバランスが崩れて、排卵がスムーズにできない状態」です。
卵巣には卵子が入った卵胞がたくさんあり、通常はその中からひとつが選ばれて排卵されます。しかしPCOSでは…
- 卵胞がいくつも育ちかける
- でも途中で成長が止まり、排卵できない
- 卵巣に小さな卵胞が並んだまま残る
このため超音波検査で見ると、卵巣のまわりに小さな卵胞が「ネックレスのように」並んで見えるのが特徴です。
原因は何?
PCOSの原因はひとつではなく、複数の要因が重なって起こると考えられています。
主な要因
- ホルモンバランスの乱れ
男性ホルモン(アンドロゲン)が多めに分泌され、排卵がうまくいかなくなる。 - インスリン抵抗性
血糖値を下げるインスリンが効きにくくなり、ホルモンの乱れにつながる。肥満や生活習慣とも関係。 - 遺伝的要素
家族にPCOSの人がいると発症リスクが上がることもある。
生活習慣との関連
食生活の乱れや運動不足、ストレスなども症状を悪化させやすいといわれています。
主な症状
PCOSの症状は人によって異なりますが、代表的なのは以下の通りです。
- 月経不順(生理がなかなか来ない、周期が長い)
- 排卵が起こりにくい(排卵障害)
- 不妊(自然妊娠が難しくなる)
- にきび、多毛(男性ホルモンの影響)
- 肥満や体重増加
「生理不順だから困る」だけでなく、「将来子どもが欲しいときに不妊の原因になりやすい」という点が、女性にとって大きな悩みになります。
治療法は?
PCOSの治療は、目的に応じてアプローチが変わります。
目的 | 主な治療法 | 補足ポイント |
---|---|---|
生理を整える | 低用量ピル、ホルモン療法 | 子宮内膜を守る役割も |
妊娠を希望する場合 | 排卵誘発剤(クロミフェンなど)、注射、体外受精 | OHSSリスクに注意 |
生活習慣の改善 | 運動、食事改善、体重コントロール | インスリン抵抗性改善に有効 |

PCOSが不妊治療に与える影響
妊活の大きな壁のひとつが「排卵しにくいこと」。
自然妊娠には「排卵」が絶対に必要ですが、PCOSでは排卵が安定せず、タイミング法だけでは難しいことがあります。
不妊治療の流れ
- 排卵誘発剤を使いながらタイミング法を試す
- 人工授精(AIH)を行う
- 効果がなければ体外受精(IVF)へ
ただしPCOSの方は、卵胞がたくさん育ちやすい分、排卵誘発剤を使うと「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」のリスクがあるため、慎重に治療が進められます。
男性が知っておくべきこと
PCOSは女性にとって身体的な症状だけでなく、精神的な負担も大きい疾患です。
- 「生理が来ない」ことへの不安
- 「子どもを授かれないかもしれない」プレッシャー
- 治療による副作用や通院ストレス
男性側が理解し、「一緒に治療に取り組もう」という姿勢を持つことが、夫婦にとって大きな支えになります。
まとめ
- PCOSは女性の5〜8%に見られる身近な疾患
- ホルモンのバランスやインスリン抵抗性が関与
- 主な症状は月経不順・排卵障害・不妊
- 治療は目的に応じて、ホルモン調整・排卵誘発・生活改善など
- 不妊治療ではPCOS特有の注意点もある
妊活・不妊治療において、PCOSはよくある課題のひとつです。決して「珍しい病気」ではなく、正しい知識を持って夫婦で向き合うことが大切です。
男性側が理解を深めることで、妻の孤独感やプレッシャーを減らすことができます。ぜひこの記事を通じて、PCOSについて夫婦で話し合うきっかけにしてみてください。
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