〜理解と支え合いのバランスを探して〜
理解しているようで、理解していなかった「不妊治療の現実」
不妊治療を始めた当初、夫くんは「病院に通えば、いずれ妊娠できるだろう」とどこか楽観的に考えていました。
けれど、現実は想像以上に長く、複雑で、精神的にも経済的にも負担がかかるものでした。
とくに、治療が進むにつれ見えてきたのは、「妻の心の変化」と「夫自身の心の揺れ」でした。
最初は「支えよう」と思っていたはずなのに、次第にどう支えたらいいのかわからなくなり、気づけば夫自身が疲れ切ってしまう──。
この記事では、男性(夫)目線で見た“不妊治療中の苦悩”と、実際に感じた悩み、その乗り越え方についてまとめていきます。
苦悩①:不妊治療に対する「妻との温度差」
不妊治療が始まると、妻は体の変化や通院など現実的な負担を感じる一方で、夫は「サポートする側」に回ることが多くなります。
そのため、どうしても「温度差」が生まれがちです。
夫くんも、最初は「病院に任せておけば大丈夫だろう」と思っていましたが、妻ちゃんは治療内容や検査結果、薬の影響に敏感になっていきました。
「次のステップに進みたい」「早く結果を出したい」という焦りと不安が大きくなっていく中、夫くんはその感情の深さを理解しきれず、戸惑いを覚えます。
- 「なぜそんなに焦るのか理解できない」
- 「自分は何をすればいいのか分からない」
- 「励ましても、逆に反応が冷たい」
こうしたすれ違いが重なると、夫の心にも小さなストレスが積み重なっていきます。
苦悩②:ホルモンバランスによる「妻のメンタル変化」への対応
不妊治療では、ホルモンバランスを整える薬や注射を使うことが多く、気分の浮き沈みが激しくなることがあります。
こればかりは、本人の努力でどうにかできるものではありません。
夫くんの場合、妻ちゃんが薬を使い始めてから明らかに変化が見られました。
口数が極端に減り、問いかけても返事がなかったり、素っ気ない反応をされることが増えたのです。
「体調が悪いんだろう」「そっとしておこう」と気を使っても、何をしても反応が冷たい。
やがて夫くんは「自分が何か悪いことをしたのか」「どう接すればいいのか」分からなくなっていきました。
本人に「どうしたの、大丈夫?調子悪い?」と聞いても「べつに…」との返答、
そして、沈黙の時間が続くうちに、次第に夫くんの心も沈んでいきました。
苦悩③:「金銭面への不安」と「プレッシャー」
不妊治療には、思っている以上にお金がかかります。
体外受精や顕微授精などの段階になると、1回あたり数十万円の費用が必要になることも珍しくありません。
治療が長期化するにつれ、「このまま続けて大丈夫なのか」「自分の給料で本当にやっていけるのか」という不安が夫を襲います。
夫くんも例外ではなく、
「もっと給料を上げないと」
「副業でも始めようか」
「昇任を目指して仕事を頑張ろう」
と、経済的な不安が行動の原動力になりました。
実際に夫くんは、その焦りをきっかけに昇任試験に挑戦しました。
おそらく多くの男性も同じように、“家族を守るための責任感”から金銭面でのプレッシャーを強く感じるのではないでしょうか。
苦悩④:夫自身の「メンタルの限界」
不妊治療は「夫婦の問題」でありながら、治療そのものはどうしても“妻中心”に進んでいきます。
その中で、夫は「支える側」「我慢する側」としての役割を求められることが多いのが現実です。
しかし、支える側だって人間です。
何をしても報われないように感じたり、妻が冷たくなったり、結果が出ない焦りが続くと、夫の心も摩耗していきます。
「何のために働いているのか」
「自分の存在価値って何だろう」
そんな言葉が頭をよぎったとき、夫くんは初めて「自分も疲れている」と気づいたのです。
解決策①:夫自身ができること
不妊治療の仕組み、薬の副作用、検査の意味などを自分で調べて理解すること。
これだけで、妻への共感力が大きく変わります。
おすすめは、病院で一緒に説明を受けたり、厚生労働省や信頼できる医療サイトで調べることです。
あとは、不妊治療のブログを見るのもいいかもしれません。
他の人の体験談、その時の感じ方などが書かれていて参考になることもたくさんあります。
「励ましたい」「助けたい」という気持ちは大切ですが、時にその言葉がプレッシャーになることもあります。
妻が何も話さないときは、「話したくなったら聞くからね」とだけ伝えて、そっと寄り添う勇気も必要です。
関係あるかわかりませんが「触らぬ神に祟りなし」という言葉もあります。笑
趣味・運動・カウンセリング・友人との会話など、自分を保つ時間を意識的に作りましょう。
不妊治療は長期戦。夫自身の心の健康も守ることが、結果的に夫婦の支えになります。
夫くんが特に意識したことは、自分の居場所を職場と家庭の2拠点にしないことです。
夫くんは「趣味」という3拠点目を持つことで、例え仕事がうまくいかなかったとき、例え家庭で妻と折り合いが悪いとき、またその両方のとき、3拠点目の「趣味」でリフレッシュまたは、気持ちをリセットしいています。
3拠点目があることでリフレッシュや気持ちのリセットができ、生活の質の向上や問題解決のきっかけに繋がります。
もし、仕事と家庭で煮詰まってしまってしまっている方がいたら、3拠点目を考えてはいかがでしょうか。
何でもいいと思います。
スポーツ、読書、買い物、ドライブ、友人との交流、愛犬と散歩、etc

解決策②:妻ができること
①夫の「理解のスピード」を責めない
夫は体験を通して学ぶタイプが多く、最初から完璧に理解するのは難しいものです。
「理解してくれない」と怒るより、「こうしてもらえると助かる」と具体的に伝える方が効果的です。
やっぱり言ってもらって初めて分かることもあります。
夫くんがそうでした。
夫婦といえ所詮他人!
育ってきた環境や見てきたもの、聞いてきたもの、感じてきたものが違うし、男と女の違いもある。
「察して!」はちょっと難しいかもしれません。
②感情の波を共有する
薬や治療によるメンタル変化を、言葉にして共有することも大切です。
「今日は薬のせいで気分が落ちてるだけ」と伝えるだけで、夫は安心できます。
この一言で救われる男性は多いんじゃないかなと思います。
夫くんの友人たちも同じことを言っていました。
解決策③:夫婦で一緒にできること
①治療方針や費用を“共に管理”
治療費や助成金制度、高額療養費制度などを夫婦で共有しておくと、金銭面の不安が軽減します。
一緒に家計を見直したり、資産運用(新NISA・株式・国債など)を学ぶのもおすすめです。
②「不妊治療以外の会話」を大切にする
治療が長くなると、どうしても話題が「妊活中心」になります。
たまには旅行や外食、ペットとの時間など、夫婦でリラックスできる時間を意識的に作りましょう。
それが心のリセットにつながります。
まとめ:夫の苦悩は“支え合いの形”を見つける過程
不妊治療中の夫の苦悩は、決して弱さではありません。
むしろ、真剣に妻と向き合おうとするからこそ感じる痛みです。
理解できない日も、言葉にできない夜もある。
それでも、互いの心を尊重しながら少しずつ歩み寄ることで、夫婦の絆は確実に強くなっていきます。


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